〈宇宙の約束〉より 1



 不時着



黒表紙の本の

背を開けばこぼれ落ちる灰に

暮れなずむ森の 瞼が開く

無数の眼が私たちを警戒している

灰の微熱に 私たちは焼かれるかもしれない

赤い眼も黄色い眼も 私たちをみつめ

ハシボソガラスがガァ、ガァと鳴き交わす枝に

ざわめき、またたき


無音の雷が私たちの内部に落ちる

森の夏を捲る私の手が

水の匂いをくぐって

風をつかむ

森の髪を梳くように

宥メルヨウニ

許して下さい私たちの船の灰を撒き散らす、

無作法な不時着を 


(詩集『宇宙の約束』より)
 
       黒表紙(くろびょうし)、瞼(まぶた)、捲(めく)る、
        梳(す)く、宥(なだ)める