不時着
黒表紙の本の
背を開けばこぼれ落ちる灰に
暮れなずむ森の 瞼が開く
無数の眼が私たちを警戒している
灰の微熱に 私たちは焼かれるかもしれない
赤い眼も黄色い眼も 私たちをみつめ
ハシボソガラスがガァ、ガァと鳴き交わす枝に
ざわめき、またたき
無音の雷が私たちの内部に落ちる
森の夏を捲る私の手が
水の匂いをくぐって
風をつかむ
森の髪を梳くように
宥メルヨウニ
許して下さい私たちの船の灰を撒き散らす、
無作法な不時着を
(詩集『宇宙の約束』より)
黒表紙(くろびょうし)、瞼(まぶた)、捲(めく)る、
梳(す)く、宥(なだ)める